大阪の交通事故に強い弁護士が慰謝料増額から後遺障害の認定まで代行いたします

交通事故 お役立ち情報

醜状障害と損害賠償

投稿日:

1 はじめに

醜状障害とは、交通事故の擦過、打撲、その後の手術等により、体に傷あとや色素沈着などが残ることをいいます。線状のものや、瘢痕、ケロイドなど、様々な形状があります。

残った部位や大きさにより、後遺障害として等級が定められています。とりわけ、頭部、顔面部、頚部といった手足以外の日常的に露出する部分を「外貌」と言い、外貌の醜状については、後遺障害等級上、手足のそれとは区別して等級が定められています。

本稿では、これら外貌の醜状障害が残存した場合を中心に、その損害賠償に関する実務上の問題点を解説いたします。

 

2 醜状障害の類型

まずはどのような醜状障害が後遺障害に該当するのかについてご説明します。

後遺障害としての醜状障害には、前述のとおり、頭部・盤面部・頚部の外貌か否か、その大きさ・程度により、後遺障害等級が定められています。

外貌の醜状

頭部、顔面部、頚部といった手足以外の日常的に露出する部分である外貌については、後遺障害7級、9級、12級と3つの等級があります。

外貌に著しい醜状を残すもの(7級)

「外貌に著しい醜状を残すもの」と評価される場合、後遺障害7級に該当します。

後遺障害7級に対する慰謝料は、いわゆる裁判所基準で1030万円にもなります。

外貌に著しい醜状を残すものとは、頭部にあっては、てのひらの大きさ以上の瘢痕や頭蓋骨がてのひら大の大きさ以上の欠損している場合をいいます。

顔面部にあっては、鶏卵の大きさ以上の瘢痕か10円硬貨大以上の組織陥没がある場合をいいます。

頚部にあっては、てのひら大以上の瘢痕が残る場合をいいます。

なお、瘢痕の大きさを測るうえで「てのひら大」という基準が出てきますが、ここには指の部分は含みません。

外貌に相当程度の醜状を残すもの(9級)

「外貌に相当程度の醜状を残すもの」と評価される場合、後遺障害9級に該当します。具体的には、顔面部に長さ5センチメートル以上の線状痕が残る場合をいいます。

顔面の線状の傷が複数ある場合には、それぞれの長さを合計して判断することになります。

後遺障害9級に対する慰謝料は、670万円とされています(裁判所基準)。

外貌に醜状を残すもの(12級)

「外貌に醜状を残すもの」と評価される場合、後遺障害12級に該当します。具体的には、頭部にあっては、鶏卵大以上の瘢痕か頭蓋骨に鶏卵大以上の欠損が残った場合がこれに該当します。

顔面部については、10円硬貨大以上の瘢痕か長さ3センチメートル以上の線状痕が残る場合がこれに該当します。

頚部にあっては、鶏卵大以上の瘢痕が残る場合がこれに該当します。

 

複数の瘢痕や線状痕が残る場合

交通事故の被害にあった場合、同一の部位に複数の傷を負うことも珍しくありません。その傷あとが残る場合の考え方についてご説明します。

例えば、右頬に2.5センチメートルの線状痕が2か所残っていた場合を想定します。この場合、ひとつの傷では3センチに満たないので、後遺障害12級にも該当しないように思えます(12級は、顔面部に長さ5センチメートル以上の線状痕)。

しかし、自賠責における後遺障害認定の運用上、2個以上の瘢痕や線状痕が相隣接し、または相まって1個の瘢痕や線状痕と同程度以上の醜状をみられる場合には、その面積、長さを合算して認定するものとされています。

上の例でいいますと、右頬2か所の傷が相隣接するものである場合には、それぞれを合算すると合計5センチメートルとなり、「顔面部に長さ5センチメートル以上の線状痕」が残る場合として、後遺障害9級に該当する可能性があります。

 

外貌以外の醜状

以上が、頭部、顔面部、頚部といった外貌に関する後遺障害の類型です。次に、外貌以外の醜状に関してご説明します。

外貌以外の醜状障害については、露出面か否かによって分類されます。

露出面の醜状

自賠責における後遺障害認定の運用では、上肢または下肢の露出面を対象として、てのひら大の醜状が残った場合に、後遺障害14級に該当します。

この「てのひら大」に指の部分を含まないことは、上記と同様です。

さらに、瘢痕の大きさがてのひら大の3倍を超える場合には、後遺障害12級に相当すると認定されます。

なお、上肢・下肢の露出面について、自賠責の基準では肩の付け根から指先まで、下肢は足の付け根から足の背部までをいいます。これに対し、労災の基準では、上肢は肘関節以下、下肢は膝関節以下とされており、範囲が異なりますので注意が必要です。

露出しない部分の醜状

以上が露出面に関する後遺障害の説明でした。これ以外の箇所として、胸部、腹部、背部、臀部がありますが、これらの部分は、露出しない部分として、その瘢痕の程度により後遺障害が認定されます。

具体的には、これら露出しない部分の全面積の1/2程度の瘢痕が残る場合には後遺障害12級相当とされ、1/4程度の瘢痕が残る場合には後遺障害14級相当とされます。

 

以上を部位ごとにまとめると、次のようになります。

 

頭 部

7級 外貌に著しい醜状を残すもの 頭部にてのひら大(指の部分は含みません。)以上の瘢痕または頭蓋骨のてのひら大以上の欠損
12級 外貌に醜状を残すもの 頭部に鶏卵大以上の瘢痕または頭蓋骨に鶏卵大以上の欠損

顔面部

7級 外貌に著しい醜状を残すもの 顔面部に鶏卵大以上の瘢痕または10円硬貨大以上の組織陥没
9級 外貌に相当程度の醜状を残すもの 顔面部に長さ5センチメートル以上の線状痕
12級 外貌に醜状を残すもの 顔面部に10円硬貨大以上の瘢痕または長さ3センチメートル以上の線状痕

頚部

7級 外貌に著しい醜状を残すもの 頚部にてのひら大以上の瘢痕
12級 外貌に醜状を残すもの 頚部に鶏卵大以上の瘢痕

上肢・下肢

12級   上肢・下肢の露出面にてのひら大の3倍を超える瘢痕
14級   上肢・下肢の露出面にてのひら大の瘢痕

露出面以外

12級   全面積の1/2程度の瘢痕
14級   全面積の1/4程度の瘢痕

 

後遺障害の認定手続

次に、後遺障害の認定手続きについてご説明します。

醜状障害に限らず、後遺障害の該当・非該当については、各都道府県の自賠責損害調査事務所という期間で行われます。

自賠責損害調査事務所では、医師が作成した後遺障害診断書をもとに、レントゲン画像やMRI検査画像を確認し、審査していきます。

醜状障害についても、後遺障害診断書に醜状の箇所・形状等を医師に記載してもらいます(後遺障害診断書の書式に醜状障害を記載する項目があります。)。また、醜状障害の認定審査にあたっては、自賠責の損害調査事務所での面接による確認・計測が行われます。

上記のとおり、傷の測り方によっても後遺障害の該当非該当が左右される可能性があります。大阪バディ法律事務所では、この面談に同行することもしております。

 

醜状障害による逸失利益

醜状障害の逸失利益の問題点

醜状が後遺障害に該当すると認定された場合、その後遺障害に対する損害賠償の項目として、後遺障害慰謝料と逸失利益が考えられます。

逸失利益とは、後遺障害の影響で、将来得られたであろう仕事の収入等が失われることを理由にする損害をいいますが、醜状障害を理由とする後遺障害の類型では、逸失利益が争点となることが多々あります。なぜなら、身体のどこかに傷あとが残ったとしても、通常、そのことによって労働能力が低下することはないのではないかと考えられるからです。

このような観点から、醜状障害を理由とする後遺障害の事案では、逸失利益の有無や金額が争いとなり、この点に関する裁判例も多くみられます。以下では、逸失利益が認めらえた事例のうち、いくつかの裁判例をご紹介します。

醜状障害に関する裁判例

左眉周辺の線状痕と下あごの瘢痕が残存した女性・高校生

事故当時17歳の女性・高校生で、左眉周辺の線状痕と下顎部の瘢痕につき後遺障害7級(後遺障害13級に該当する歯牙障害も併存し、後遺障害等級は併合6級)の事案について、素顔の状態では一見して明確に視認でき、化粧等をした状態でも顔面を注視すれば線状痕が存在を判別でき、このような線状痕の部位及び程度に照らすと、接客業に従事することを希望していた就職活動に向けた意欲に影響したのみならず、就職活動において具体的に不利益な影響を生じた可能性も小さいということはできないとしつつ、運動能力等に影響を与えるものではなく、また、瘢痕等が就職活動に大きな影響を生じたとは考え難く(事故後に化粧品販売会社に美容部員として就職)、左眉の周辺の線状痕も後遺障害等級7級に該当する外貌醜状としては比較的軽度のものであるとして、就労可能年数までの46年間12%の労働能力の喪失を認めました。

(名古屋地裁平成25年1月24日判決)

 

前額部に線状痕が残存した女性・介護士兼主婦

症状固定時44歳の女性・介護士・主婦で、眉間部から前額部にかけて長さ9.5cmに及ぶ線状瘢痕につき後遺障害(現行の等級で第9級)認定を受けた事案につき、現在でも始終人目を気にしている状況にあり、労働効率の点などに悪影響が及んでいると考えられること、前額部のつっぱり感は現在まで常に続いており、傷痕部分に手などが触れると電気が走ったようなしびれ感があること、本件事故による減収は認められないが、自身が就労に対する後遺障害の悪影響を最小限度に抑えるために日々相当程度の努力を重ねていること、今後、仮に原告が転職するとした場合、後遺障害による不利益の発生が考えられることなどから、就労可能年数までの23年間20%の労働能力の喪失を認めました。

(神戸地裁平成25年11月28日判決)

 

口唇部に瘢痕が残った女性・大学生

症状固定時19歳の女性・大学生で、口唇部に10円硬貨大以上の瘢痕(2センチメートル×1.9センチメートル)について後遺障害12級が認定された事案につき、被害者が保育士になることを希望しているが、子供に接する仕事であり瘢痕によりその就職が制限される蓋然性がある(事故後にコンビニ等でアルバイトをしていたことはこれを否定するものではない。)とし、大学卒業から就職等の制限の蓋然性が高い40歳までの期間、14%の労働能力の喪失を認めました。なお、その後の不利益は慰謝料で考慮するのが相当とされました。

(名古屋地裁平成25年7月5日判決)

 

口唇部に瘢痕が残った男性・貨物自動車運転手

症状固定時41歳の男性・貨物自動車の運転手で、口唇部に長さ5センチメートル以上にわたり線状痕が残存し、後遺障害9級と認定された事案につき、人目につき程度のものであること、初対面に近い顧客との折衝に消極的になっていること、社内の評価が落ちて将来の昇進や転職に影響する可能性が否定できないこと等から、27年間5%の労働能力の喪失を認めました。

(さいたま地裁平成27年4月16日判決)

 

醜状障害の逸失利益の考え方

以上の裁判例を見ても、醜状障害に関する逸失利益の判断は、事案ごとに様々です。

醜状障害の場合、そもそも労働能力に影響があるかということ自体が争われ、その判断にあたっては、醜状の部位・内容・程度に加え、被害者の職業(事故前後)、将来の転職可能性までもが要素となります。

また、これまでの裁判例では、逸失利益が否定され、あるいは低額と判断される場合に、慰謝料額を通常より増額して救済を図る判断も見られます。もっとも、このような慰謝料の増額も、機械的に認められるものではなく、例えば外貌醜状の影響により対人関係が消極になってしまうなどといった、逸失利益としては評価しきれない(いわば間接的な)影響が認められる場合に、これを精神的損害として評価するという理屈によるものと考えられます。

 

まとめ

このように、醜状障害を理由とする後遺障害については、まず適正な後遺障害等級認定を受けることが不可欠です。

そのうえで、醜状障害を理由とする逸失利益の損害賠償を求めるにあたり、醜状の程度やそれによる職業への影響を具体的に説明することが、示談交渉や訴訟において重要となります。

交通事故に遭われ、傷あとが残ってしまった方、残ってしまうのではないかとご不安に思われている方は、是非一度、大阪バディ法律事務所にご相談ください。

-交通事故 お役立ち情報

Copyright© 大阪の交通事故に強い弁護士相談サイト , 2024 AllRights Reserved.